熱中症 労災 判断基準を弁護士が徹底解説!業務上かどうかのポイント


埼玉県越谷市をはじめ、春日部市、草加市など埼玉県東部エリアにお住まい・お勤めの皆様へ。

最近、暑い日が続き、仕事中に熱中症になる方が増えています。

熱中症は、ときに深部体温が40℃以上に達し、重要な臓器にダメージを与える深刻な状態です。

もし仕事で熱中症になった場合、労災保険から補償を受けられるかが重要になります。

そのためには、熱中症が**「業務上の疾病」**と認められる必要があります。

**しかし、**この「業務上」という判断は簡単ではありません。

個別の状況によって変わり、医学的・専門的な知識も必要となるためです。

「暑い日に倒れただけ」と軽く見られてしまうこともありますが、私はそんな風潮を決して許しません。

この記事では、弁護士法人キャストグローバル越谷レイクタウン支店の弁護士が、熱中症の労災判断基準を分かりやすく解説します。

特に、2025年6月の法改正により、会社の責任は以前とは比べものにならないほど重くなっています。

WBGT値や作業内容、そしてご自身の健康状態や持病がどう影響するのか、最新の医学的知見と法改正を踏まえて説明します。

この記事を通して、熱中症の労災における判断基準、そして弁護士がどうサポートできるかもご理解いただけるでしょう。

熱中症が労災として認められるための全体的な手続きや、具体的な認定事例については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。

【埼玉・越谷】熱中症は労災になる?弁護士が認定基準・手続き・事例を徹底解説!


目次

2. 熱中症の「業務起因性」を判断する3つの柱と具体的要素

熱中症が仕事が原因で起きたか(業務起因性)を判断する際、主に3つの要素を総合的に見ます。

① 作業環境条件(一般的要因):作業場所は熱中症になりやすい環境でしたか?

WBGT(暑さ指数)の正体とその計算方法

WBGT(湿球黒球温度)値の評価

厚生労働省は作業のきつさに応じたWBGT基準値を示しています。
これを超えると熱中症リスクが高いとされます。

労災の調査で必ず出てくる「WBGT(湿球黒球温度)」とは、一言で言えば「人体が感じる熱ストレス」を数値化したものです。
単なる「気温」だけでは、熱中症の本当の危険度は測れません。

WBGTは、以下の3つの指標を組み合わせて導き出されます。

  1. 自然湿球温度(湿度): 濡れたガーゼで覆った温度計で測る、汗が蒸発して熱を逃がす効率の指標です。
  2. 黒球温度(輻射熱): 黒い球体の中の温度計で測る、日差しや地面、壁からの強烈な照り返しの熱です。
  3. 乾球温度(気温): 通常の温度計で測る、純粋な空気の温度です。

これらを、環境省やJIS規格が定める以下の式で合算します。

【屋外(日射あり)の場合】

WBGT = 0.7 ×湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1× 乾球温度

【屋内・日射なしの場合】

WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.3× 黒球温度

注目すべきは、計算式の70%(7割)を「湿度」が占めているという点です。
湿度が上がると、人体は汗を乾かせず、体内の熱を外に逃がせなくなります。
つまり、気温が30℃以下であっても、湿度が高い現場であればWBGT値は跳ね上がり、命の危険が生じるのです。

2025年6月の法改正では、このWBGT値が「28℃以上(気温31℃以上が目安)」の環境下での対策が、会社の「法的義務」となりました 。WBGT値を測った記録は重要です。
なければ気象データなどから推測します 。
基準値超えは業務起因性を強く示す要素です。

現場で測定記録がない場合は、アメダス越谷観測所などのデータから数値を推定して立証します。
[環境省 熱中症予防情報サイト]

しかし、基準値以下でも他の要素で熱中症の労災認定がされることもあります。

事業者の作業環境管理義務

労働安全衛生法に基づき、事業者は暑熱または多湿の屋内作業場では定期的な温湿度等の測定を行わなければなりません。
また、熱源からの熱の遮断・排気などの措置を講じることも法的義務です 。

② 作業条件(業務要因):仕事内容は熱中症のリスクを高めましたか?

作業内容・きつさ

重い物を持つ、激しい運動(労作性熱中症のリスク)、ずっと続く作業、屋外での長時間の仕事など。
暑く湿気の多い場所での作業(厨房、ボイラー室など)。

医学的に、熱中症のリスクは「湿度」が7割も影響します。
気温が低くても、ジメジメしていれば汗が蒸発せず、細胞が壊れ始めるからです。

なぜ暑いだけで人の体は深刻なダメージを受けてしまうのか、その恐ろしい医学的メカニズムについてはこちらの記事をご覧ください。

【埼玉・越谷】熱中症で死亡する原因とは?身体を蝕む医学的メカニズムを弁護士が徹底解説


通気性の悪い服や保護具での作業も、体温調節を妨げる大きな要因です。

作業時間・休憩・水分補給

連続して働いた時間、1日の合計作業時間
休憩の回数、時間、場所(涼しい場所か)。
会社からの水分・塩分補給の指示や提供があったか。
暑さ対策の作業計画があったか。

これらを怠る会社に、労働者の命を預かる資格はありません。

③ 個体側条件(労働者側の要因):労働者自身の健康状態や背景はどうでしたか?

熱中症の発症には、働く人自身の健康状態や背景も影響します。
これらは「危険因子」とも呼ばれ、熱中症の労災認定の判断において、業務による負荷と比較して考慮されます。

基礎疾患(持病)とその影響

糖尿病、高血圧、心疾患、腎不全などは、熱中症のリスクを著しく高めます。

重要: 持病があるからといって、すぐに労災が否定されるわけではありません。
業務による暑熱環境や作業負荷が、持病の自然な経過を超えて著しく状態を悪化させたなら、それは立派な労災です 。

服用中の薬剤

利尿剤や抗精神病薬などは、脱水や体温調節に深刻な影響を与えることがあります 

暑熱順化の程度

その暑熱環境での作業に体が慣れていたかどうか。
行政は、少なくとも7日以上かけて熱に慣らすことを求めています。
これを無視して無理な作業を強いた会社の責任を、私は厳しく追及します。


実務上の判断材料:厚生労働省の通達と裁判例の活用

熱中症の労災判断を行う際、労働基準監督署や裁判所は重要な資料を参考にします。

厚生労働省の関連通達とそのポイント

厚生労働省は、職場の熱中症予防や労災認定について数多くの「通達」を出しています。

特に最新の改正規則では、「報告体制の整備緊急対応手順の策定」が事業者に義務付けられました。

また、2025年1月1日以降、死傷病報告は「電子申請」が必須となっています。

こうしたルールの不備は、会社の過失を証明する決定打となります 。

参考となる裁判例の傾向

過去の裁判例(大阪高裁 2016年など)では、会社が熱中症の危険を予見できたか、適切な救護措置をとったかが厳しく問われています。

法改正後の現在、会社が「知らなかった」「対策をしていたつもりだ」という言い逃れをすることは、もはや不可能です 。


【2025年6月改正】熱中症対策は「会社の義務」になりました

ここで非常に重要な法律の変更点をお伝えします。
2025年6月1日施行の法改正により、職場の熱中症対策は「努力」から「法的義務」へと格上げされました。
会社が「救護マニュアルの整備」や「報告体制の周知」を怠っていた場合、それは「安全配慮義務違反」という、会社側の過失(落ち度)になります。
今後は「防げたはずの人災」として、会社への責任追及がより厳しく行われます。

2025年6月から始まった新しいルールの詳細については、こちらの記事でわかりやすく解説しています。

【2025年6月施行】熱中症対策は会社の義務に!あなたの職場が変わる新ルール【弁護士解説】

労働者の安全を守るための具体的な義務については、こちらの法律でも定められています。

[労働安全衛生規則 第612条の2]

その場で法令違反をチェック!労働者のための「安衛法・規則」法的義務リスト

熱中症が発生した際、または危険を感じた際、会社が以下の労働安全衛生法(安衛法)および労働安全衛生規則(安衛則)に定められた具体的義務を果たしているか確認してください。

以下のチェック項目で「いいえ」がある場合、会社は刑事罰の対象となる法令違反を犯している可能性があります。

① WBGT(暑さ指数)の測定義務

  • ☑ 会社は現場で暑さを測っていますか?
    • 根拠条文労働安全衛生規則 第607条、および改正後の管理指針
    • 具体的条文(第607条抜粋): 「事業者は、…屋内作業場(暑熱、寒冷又は多湿な屋内作業場で、有害のおそれがあるものに限る。)について、定期的に、気温、湿度及びふく射熱…を測定しなければならない。」
    • 解説: 屋内だけでなく、2025年6月以降、熱中症リスクのある現場(WBGT 28℃以上想定)では測定と記録が実質的に義務化されています 。

② 報告体制の整備義務(2025年6月1日施行)

  • 体調が悪くなった時の報告先は事前に決まっていますか?
    • 根拠条文労働安全衛生規則 第612条の2 第1項
    • 具体的条文: 「事業者は、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合…にその旨を報告させる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。」

③ 悪化防止手順の策定義務(2025年6月1日施行)

  • 誰が救急車を呼び、どこで冷やすかの手順は決まっていますか?
    • 根拠条文労働安全衛生規則 第612条の2 第2項
    • 具体的条文: 「事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め…」

④ 周知義務(2025年6月1日施行)

  • ☑ 上記の手順や体制について、説明を受けましたか?
    • 根拠条文労働安全衛生規則 第612条の2 第3項
    • 解説: 上記の①および②の内容を、作業に従事する者に周知しなければなりません 。

⑤ 飲料水および塩分の備え付け義務

  • いつでも水や塩飴を補給できる状態でしたか?
    • 根拠条文労働安全衛生規則 第617条
    • 具体的条文: 「事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるため、塩及び飲料水を備えなければならない。」

⑥ 健康障害防止の包括的義務

  • そもそも、暑熱環境に対する対策が不十分ではありませんでしたか?
    • 根拠条文労働安全衛生法 第22条 第2号
    • 具体的条文: 「事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。… 二 高温、低温、多湿…による健康障害」

これらの法的義務を怠り、労働者を熱中症にさせた事業主には、労働安全衛生法 第119条 第1号に基づき、「6か月以下の拘禁刑(旧懲役)または50万円以下の罰金」という刑事罰が科される可能性があります 。

弁護士が「業務上」の立証で果たす役割

熱中症が「業務上」だと証明するには、法的な主張だけでなく「医学的な証拠」を積み上げることが不可欠です。

医学的エビデンスの収集

弁護士は、血液検査の結果などのバイオマーカー(体の異常を示す数値)を分析します。

  • 「CK値・ミオグロビン尿」: 筋肉が熱で壊れた証拠です。
  • 「クレアチニン・BUN」: 深刻な脱水と腎臓へのダメージを示します。
  • 「Dダイマー」: 全身の血管で血が固まってしまう危険な状態(DIC)の兆候です。
    これらの数値から「この病態は、業務環境が原因で引き起こされたものである」と論理的に組み立てます。

厚生労働省が公表している認定基準も、立証のための重要な資料となります。
[厚生労働省 職場における熱中症の予防について]

安全配慮義務の4つのチェック

裁判例では、会社が以下の義務を果たしていたかを厳しくチェックします。

  1. 環境監視義務」: WBGT値を測定し、危険を把握していたか?
  2. 設備整備義務」: 冷たい水や塩分、涼しい休憩所を適切に備えていたか?
  3. 作業管理義務」: 休憩を強制し、体調不良者が出ていないか注視していたか?
  4. 救護義務」: 異常時にすぐ身体冷却を行い、ためらわず救急車を呼んだか?

まとめ:熱中症の労災判断、専門家のサポートで「真実」を

この記事のポイントをまとめます。

  • 熱中症は「業務遂行性」と「業務起因性」が認められれば労災になります。
  • 2025年6月の法改正で、会社の予防・救護義務はこれまで以上に重くなりました。
  • 持病があっても、血液検査などの客観的データで「業務が原因」と証明できれば認定されます。

越谷・埼玉エリアで熱中症被害に遭われた方は、一人で悩まず弁護士にご相談ください。
弊所では、15分間の電話無料相談を行っております。

医学と法律の両面から、あなたの権利を守るために「全力で戦います。

労災事故の無料相談はこちら

お気軽にお電話ください

0120-122-138

【受付時間】8:00〜22:00(土日祝日含む)

労働補償給付を会社に代わって行います

労災隠しをしようとする会社、労災申請に非協力的な会社の場合、労災補償給付手続きがスムーズに進められない可能性があります。
この場合、弊所で労災補償給付の代行を格安で行います。