労災事故に遭ったら知っておきたい!「使用者賠償責任保険」とは?政府労災保険との違いも解説

労災事故に遭ったら知っておきたい!「使用者賠償責任保険」とは?政府労災保険との違いも解説

労災事故に遭ったら知っておきたい!「使用者賠償責任保険」とは?政府労災保険との違いも解説

はじめに:「このままでは生活が不安だ…」と感じているあなたへ

労災事故に遭い、身体に傷を負っただけでなく、仕事ができなくなったことによる収入の不安、そして何より、精神的な苦痛と将来への見通しが立たないことによる深い不安を抱えてはいないでしょうか。

政府の労災保険は、そうした苦境に立たされた労働者を保護するための重要なセーフティネットですが、残念ながら、すべての損害を完全にカバーするものではありません。

特に多くの被災者が不安に感じるのが、労災保険ではカバーされない「慰謝料」などの項目です。もし、労災事故が会社の安全管理の不備によって引き起こされたとしたら、その責任を会社に問うことはできないのか、と考えるのは自然なことです。そこで知っておいていただきたいのが、会社が任意で加入している可能性のある「使用者賠償責任保険」という存在です。

この保険は、政府の労災保険だけでは補いきれない部分、特に慰謝料を補償するために設計されています。あなたの正当な権利を守るための第一歩として、この保険の仕組みと活用法を解説します。

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第1章:労災事故で会社が支払うべきお金(賠償責任)とは

1.1 なぜ政府労災保険だけでは「補償」が足りないのか?

労災保険は、正式には「労働者災害補償保険」といい、業務上の災害に対する最低限の生活保障を目的とした公的な制度です[1]。この制度の目的は、あくまで被災労働者やその遺族の生活を支えるための「補償」であり、会社が負う民事上の「賠償」責任とは法的な性質が異なります[2]。労災保険は、治療費や休業中の生活費を補助する休業補償、障害が残った場合の障害補償などを給付します[3]。

しかし、労災保険の給付には、被災者が負った精神的・肉体的な苦痛に対する「慰謝料」は一切含まれていません[4]。多くの被災者が「労災保険だけでは不十分だ」と感じる最大の理由は、この慰謝料が補償されない点にあります。慰謝料は、事故によって受けた心の傷や肉体的な苦痛を金銭的に評価したものであり、これは政府の公的な保護とは異なる、会社の「法的責任」が問われる領域なのです[5]。

この労災保険の給付の限界こそが、会社が民事上の賠償責任を負う場合にその損害を填補するための保険である、使用者賠償責任保険の存在意義を明確にしています。労災保険が「公的なセーフティネット」として最低限の生活を支える一方、使用者賠償責任保険は、その公的制度の隙間を埋めるように、企業の民事上の責任を果たすためのツールとして機能します。

1.2 会社に賠償責任が生じるケースとは? 「安全配慮義務違反」を理解する

労災事故が発生したからといって、必ずしも会社に賠償責任が生じるわけではありません。会社に賠償責任が生じるのは、その事故が会社の責任によって引き起こされたと認められた場合です。この責任の根拠となるのが、労働契約法第5条に明記されている「安全配慮義務」です[6]。この義務は、会社が労働者との契約に伴い、労働者の生命や身体の安全を確保しつつ働けるように、必要な配慮をすることを定めています。

安全配慮義務違反は、単に法律や規則に違反した場合に限らず、会社が危険を予見できたにもかかわらず、その危険を回避するための措置を怠った場合に認められます[7]。具体的な事例としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 危険な作業環境の放置:老朽化した設備の放置や、適切な安全装置が取り付けられていない機械の使用を命じた場合[8]。
  • 人的管理の不備:精神疾患や過労死につながるような過重労働や長時間労働を放置した場合[9]。
  • 危険性に対する配慮不足:猛暑の中での屋外作業における熱中症対策の不足や、ハラスメントが放置された職場環境など[10]。

重要なのは、これらの義務は従業員からの申告の有無に関わらず、会社が自ら状況を把握し、必要な対応を取ることが前提であるという点です。「知らなかった」「申し出がなかった」といった会社の言い訳は通用しません。

会社の安全配慮義務違反が高額な賠償判決につながるケースが続出しているにもかかわらず、中小企業を中心に労災リスクに対する損害保険への加入が進んでいないという調査結果もあり[11]、会社側が賠償リスクを十分に認識していない可能性が示唆されます。このような背景があるため、会社が賠償交渉に非協力的であったり、その重要性を理解していなかったりするケースも少なくありません。

1.3 会社が賠償責任を負った裁判例と賠償額の目安

抽象的な「賠償責任」が、実際にどれほどの金額になるのかを理解することは、今後の交渉や手続きを考える上で非常に重要です。以下に、実際に会社が安全配慮義務違反を問われ、高額な賠償が命じられた裁判例をいくつか紹介します[12]。

  • 転落事故による負傷:適切な安全対策を怠った工場での転落事故で、会社に約2,200万円の賠償が命じられたケース。
  • 過重労働による精神疾患と自殺:月100時間超の残業によるうつ病を発症し、自殺に至ったケースで、会社に約7,000万円の賠償が命じられたケース。
  • 過重労働とパワハラによる精神疾患:パワハラと過重労働によって精神疾患を発症し、長期間休職したケースで、会社に約1,100万円の賠償が命じられたケース。

これらの事例が示すように、労災事故は単なる不運な出来事ではなく、会社の責任を問うことで、被災者の人生を立て直すための重要なプロセスとなりうるのです。

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第2章:「使用者賠償責任保険」とは?慰謝料などを補償する会社の保険

2.1 この保険はなぜ存在するのか? 会社側の視点

使用者賠償責任保険は、労災事故による高額な賠償請求リスクから会社を守るための「企業防衛」を目的とした保険です。労働者の安全配慮義務違反による賠償請求は、数千万単位に及ぶこともあり、会社の経営を大きく揺るがすリスクとなります。この保険は、そうした賠償リスクに備えるために、多くの企業が任意で加入しています。保険会社や商品によっては、「業務災害保険」や「法定外補償保険」といった名称で提供されていることもあり、複数の保険が組み合わさっている場合もあります[13]。

2.2 労災保険ではカバーされない損害を具体的に補償する

この保険の最大の強みは、政府の労災保険ではカバーされない損害を具体的に補償してくれる点にあります。主な補償項目は以下の通りです[14]。

  • 慰謝料:労災保険では支払われない、精神的苦痛に対する賠償金が補償されます。
  • 逸失利益:後遺障害によって将来的に失われるはずだった収入や、労災保険の給付額を超える休業損害などが補償されます。
  • 弁護士費用:会社が賠償問題の解決のために要した訴訟費用や弁護士費用なども補償の対象となります[15]。

特に弁護士費用が補償対象となっているという事実は、この保険が労災事故後の訴訟リスクを前提として設計されていることを示しています。これは、会社との交渉が難航した場合、最終的に法的な争いに発展する可能性が高いという現実を示唆しており、専門家によるサポートの重要性を裏付けています。

2.3 慰謝料の種類と相場はどれくらい?

慰謝料には、主に以下の3種類があり、それぞれ裁判上の基準が示されています。

  • 入通院慰謝料:事故による負傷で入院・通院した期間に応じて算定されます。例えば、骨折で1年間通院した場合、裁判基準で154万円程度が目安とされています[16]。
  • 後遺障害慰謝料:症状固定後に残った後遺症に対して、認定された等級に応じて支払われます。裁判基準では、最も重い1級で2,800万円、最も軽い14級でも110万円が目安です[17]。
  • 死亡慰謝料:労災事故で労働者が亡くなった場合に遺族が請求できます。被災者の立場によって相場が異なり、「一家の支柱」の場合は2,800万円、「母親・配偶者」の場合は2,500万円が目安とされています[18]。

これに加え、重度の後遺障害や死亡事故の場合には、被災者だけでなく近親者(配偶者、子、父母など)の精神的苦痛に対する慰謝料(近親者慰謝料)が別途認められることもあります[19]。

2.4 会社が使用者賠償責任保険に加入しているか確認する方法

使用者賠償責任保険は任意加入の保険であるため、その加入状況が対外的に公開されているケースはほとんどありません。被災者自身がその有無を確認することは困難なのが現実です。最も現実的な確認方法は、会社の人事や総務担当者、または会社が取引している保険代理店に直接問い合わせることです[20]。

しかし、労災事故が発生した際に、会社が情報開示に消極的であったり、労災認定そのものに非協力的であったりするケースは少なくありません。このような状況では、被災者が会社の加入情報を得ることはさらに困難になります。この情報格差は、被災者を交渉の初期段階から不利な立場に置くことにつながります。会社が情報開示に消極的であっても、労働問題に精通した弁護士が介入することで、法的な根拠に基づいた情報収集が可能となり、正当な権利を主張するための道が開かれます。

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第3章:政府労災保険と使用者賠償責任保険の役割の違いを理解する

2つの保険の役割を明確に理解することは、今後の手続きを円滑に進める上で不可欠です。両者の違いを以下の表にまとめました。

項目 政府労災保険(労働者災害補償保険) 使用者賠償責任保険
目的 労働者の生活保障 企業の賠償責任補填
法的根拠 労働者災害補償保険法 民法(安全配慮義務など)
加入義務 事業主に義務 任意
保険料負担 全額事業主 全額事業主
請求先 労働基準監督署 会社またはその保険会社
補償項目 治療費、休業補償、障害補償など 慰謝料、逸失利益、弁護士費用など

この表が示すように、政府労災保険は最低限の生活を支えるための「公的制度」であり、会社側の責任を問うものではありません。一方、使用者賠償責任保険は、会社が負うべき「民事上の賠償責任」を補填するための保険です。この役割の違いを理解することが、適切な賠償請求を行うための出発点となります。

3.2 2つの保険を賢く活用するステップ

労災事故に遭った際、闇雲に行動するのではなく、以下のステップを踏むことで、正当な権利を守ることができます。

  • **まずは労災保険を申請する**:労災保険の給付を受けることは、その後の賠償請求を進めるための大前提となります。労災認定を受けることで、事故が業務上の災害であったことが公的に認められ、賠償請求の交渉を有利に進めることができます。
    **労災申請の流れと手続きを専門弁護士がわかりやすく解説|会社が非協力的でも諦めないで**
  • **労災認定後、会社に賠償請求を検討する**:労災保険の給付が確定した段階で、不足している損害(特に慰謝料)について、会社に賠償請求を検討します。会社に安全配慮義務違反が認められるかどうかが重要なポイントになります。
  • **示談交渉の開始と注意点**:まずは会社との間で示談交渉を行うのが一般的です。この際、後遺症が残るかどうか未確定な段階で示談をしないこと、そして適切な後遺障害等級が確定してから交渉を開始することが重要です。
  • **弁護士への相談**:会社が労災を認めない、あるいは賠償請求に非協力的な場合、交渉が難航した場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談することを強く推奨します。弁護士は、会社の法的責任を立証するための証拠収集、適切な賠償額の算定、会社との交渉や訴訟手続きを一貫してサポートしてくれます。
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まとめ:労災事故に遭ったら、まず取るべき行動

労災事故に遭った時、何から手をつければ良いか分からず、不安に苛まれるのは当然のことです。しかし、あなたの正当な権利を守るための道は、確実に存在します。

この記事で解説した要点を最後にまとめます。

  • 政府の労災保険は最低限の「補償」であり、「慰謝料」は含まれない。
  • 慰謝料などの賠償金は、会社の「安全配慮義務違反」などを根拠に請求する必要がある。
  • その際、会社が加入している可能性のある「使用者賠償責任保険」が、その賠償金の支払いをカバーしてくれる。

これらの知識を踏まえ、まずは以下の2つの行動を速やかに取ることをお勧めします。

  • まずは速やかに**労災保険の申請手続き**を開始してください。
  • 同時に、会社の人事・総務担当者に、**使用者賠償責任保険**に加入しているか確認を求めてください。

もし会社が非協力的であったり、手続きに不安を感じたりする場合は、一人で抱え込まず、適切な情報と専門家のサポートを得ることで、あなたの正当な権利を守ることができます。諦めないでください。

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