遺留分侵害額請求は内容証明郵便で?書き方と送り方を弁護士が解説
「遺留分を侵害されているので請求したいが、まず何から始めればよいか分からない」というご相談の中で、多くの方が最初に検討されるのが内容証明郵便の送付です。遺留分侵害額請求権には1年という短い時効期間が定められているため、請求の意思表示をいつ、どのような形で行ったかを客観的に証明できる手段を選ぶことが重要になります。今回は、遺留分侵害額請求における内容証明郵便の書き方と送り方について解説します。
なぜ遺留分侵害額請求は内容証明郵便で行うべきか
時効の完成を止める意思表示の証拠になる
遺留分侵害額請求権は、相手方に対して請求の意思表示をした時点で権利行使の効果が生じるとされています。民法1048条により、この請求権は「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」行使しないと時効によって消滅します。口頭やメールでの請求も法律上は可能ですが、「いつ、どのような内容の意思表示をしたか」を後から客観的に証明することが難しく、時効の成否をめぐって争いになる可能性があります。内容証明郵便を利用すれば、郵便局が「誰が、いつ、どのような内容の文書を、誰に対して差し出したか」を証明してくれるため、時効期間内に意思表示を行った事実を明確に残すことができます。
「言った言わない」のトラブルを防ぐ
相続をめぐる話し合いは、当事者間の感情的な対立が絡みやすく、後になって「そのような請求は聞いていない」といった水掛け論に発展することも少なくありません。内容証明郵便によって請求の内容を書面で明確に残しておくことは、その後の交渉や、調停・訴訟に移行した場合の重要な証拠となります。
内容証明郵便の書き方
記載すべき主な項目
遺留分侵害額請求の内容証明郵便には、一般的に以下の項目を記載します。
- 差出人(請求者)の氏名・住所
- 受取人(請求の相手方)の氏名・住所
- 被相続人の氏名・死亡日(相続開始日)
- 差出人が被相続人の相続人であり、遺留分権利者であること
- 遺言または生前贈与により遺留分が侵害されている事実の概要
- 遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示
- 今後の連絡先・回答期限の目安
- 作成日付
文例(記載イメージ)
実際の文面では、まず被相続人の氏名と死亡日を明記した上で、「私は被相続人〇〇の相続人であり、遺留分権利者に該当します。被相続人が令和〇年〇月〇日付で作成した遺言公正証書(または、被相続人が生前に行った贈与)により、私の遺留分が侵害されていることが判明しましたので、貴殿に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求いたします」といった形で、請求の意思表示であることが明確に伝わる表現を用います。具体的な請求金額を記載するかどうかは事案によって判断が分かれるため、財産調査が未了の段階では、金額を確定させずに「意思表示のみ」を先行させる書き方を選ぶケースもあります。
書式上のルール
内容証明郵便には、1枚あたりの字数・行数(縦書きの場合1行20字以内・1枚26行以内など)に関するルールがあり、規定の書式に沿って作成する必要があります。同じ内容の文書を3通(差出人用・受取人用・郵便局保管用)用意する必要がある点にも注意が必要です。
内容証明郵便の送り方
郵便局での手続きの流れ
内容証明郵便は、集配郵便局など内容証明の取り扱いがある郵便局の窓口で差し出します。同一内容の文書3通と、差出人・受取人の住所氏名を記載した封筒を用意し、窓口で内容証明の認証を受けた上で発送します。近年ではインターネットを利用した電子内容証明サービスも利用できます。
配達証明を付けるべき理由
内容証明郵便には、あわせて「配達証明」を付けることを推奨します。配達証明とは、文書がいつ相手方に配達されたかを証明するサービスです。遺留分侵害額請求権は相手方に意思表示が到達した時点で効果が生じるため、配達証明によって到達日を明確にしておくことで、時効期間内に請求が到達した事実を客観的な記録として残すことができます。
相手が受け取らない場合はどうなるか
相手方が受け取りを拒否したり、不在が続いたりして内容証明郵便が「不到達」で返送されるケースもあります。この場合、郵便物が実際に相手方の支配圏内に置かれたと評価できる状況(不在通知を経て受取りが可能な状態にあったことなど)があれば到達が認められる場合もありますが、事案によって判断が分かれるため、状況に応じた対応(配達場所の見直し、公示送達の検討等)が必要になることがあります。このような場合は弁護士へ相談することをおすすめします。
内容証明郵便を送った後の流れ
相手からの返答がない場合
内容証明郵便を送付しても、相手方から返答がない、あるいは支払いに応じない旨の回答がある場合は、任意の交渉を続けるか、家庭裁判所への遺留分侵害額の請求調停の申立て、または地方裁判所への訴訟提起へと進めることになります。内容証明郵便はあくまで時効の完成を止めるための意思表示であり、その後の具体的な金額の確定や支払いの実現には、交渉や法的手続きが別途必要になる点に留意してください。
不動産・非上場株式の評価方法による金額の違い
遺留分侵害額の算定においては、不動産や非上場株式などの評価方法一つで金額が大きく変わることがあります。評価方法によっては遺留分侵害額が大きく変わる場合がありますので、内容証明郵便を送付する前の財産調査・評価の段階から、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。
内容証明郵便を送っても、相手が無視したり、明確に拒否したりするケースもあります。
そのような場合の調停・訴訟への移行の流れについては、遺留分侵害額請求を無視・拒否された場合の対応について解説した記事で詳しく解説しています。
内容証明郵便の作成・送付を弁護士に依頼するメリット
内容証明郵便は自分で作成・発送することも可能ですが、記載内容によっては、後の交渉や調停・訴訟の場面で不利な材料として扱われてしまうリスクがあります。たとえば、根拠のない金額を明記してしまったり、事実関係の記載に誤りがあったりすると、後から訂正が難しくなることがあります。遺産相続問題の解決実績を持つ弁護士に依頼することで、時効の完成を止めるための的確な意思表示を行いつつ、その後の交渉を見据えた内容証明郵便を作成することができます。また、弁護士名義で内容証明郵便を送付することで、相手方が任意の話し合いに応じやすくなる効果も期待できます。
よくある質問
Q1. 内容証明郵便を送らないと遺留分侵害額請求はできませんか?
法律上、遺留分侵害額請求の意思表示は口頭でも可能とされており、内容証明郵便の送付が法律上の要件というわけではありません。もっとも、時効期間内に意思表示を行った事実を客観的に証明する必要があるため、実務上は内容証明郵便(配達証明付き)を利用することが一般的です。
Q2. 内容証明郵便を送った後、すぐに支払いを受けられますか?
内容証明郵便の送付は、時効の完成を止めるための意思表示にとどまり、支払いそのものを強制する効力はありません。実際の支払いに至るまでには、相手方との交渉や、調停・訴訟といった法的手続きを経る必要がある場合があります。
Q3. 内容証明郵便に具体的な請求金額を書く必要がありますか?
財産調査や評価が完了していない段階では、具体的な金額を記載せずに、まず請求権を行使する意思表示のみを行う書き方を選ぶことも可能です。金額を確定させる前に相手方に伝えてしまうと、後の交渉で不利になる場合もあるため、記載内容は状況に応じて慎重に検討する必要があります。
Q4. 相手方が遠方に住んでいる場合や住所が分からない場合はどうすればよいですか?
相手方の住所が分かっている場合は郵送で対応できますが、住所が不明な場合は戸籍の附票などから調査する必要があります。それでも住所が判明しない場合は、裁判所の手続き(公示送達等)を利用した対応の可能性を検討することになります。
遺留分侵害額請求の内容証明郵便、
作成前にご相談ください。
時効の完成を止める意思表示は、記載内容や送付方法を誤ると後の交渉に影響することがあります。財産調査から内容証明郵便の作成・発送まで、弁護士がサポートいたします。初回相談は無料です。
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