2026年4月施行:一人親方・フリーランスが労働安全衛生法の保護対象に。会社への請求がより明確になった理由

2026年4月1日、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の主要部分が施行されました。この改正により、労働者と同一の場所で作業を行う個人事業者等(一人親方・フリーランス等)が、労働安全衛生法による保護の対象として明文で位置づけられました。これまで判例法理に委ねられていた部分が法律上の権利として整理されたことで、元請会社・注文者への安全対策要求や、義務違反を根拠とした損害賠償請求がより明確に行えるようになっています。

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改正前の状況:判例法理による保護の限界

改正法が施行される前、一人親方・フリーランスの安全保護に関しては、主に最高裁判例(川義事件・昭和59年)の判例法理に依拠していました。同判例は、雇用関係がなくても元請・発注者との間に「特別な社会的接触の関係」があれば安全配慮義務が生じうると認めましたが、あくまで民事上の損害賠償請求の根拠にとどまり、労働安全衛生法上の行政的な保護(指導・監督・是正命令等)の対象外でした。

📌 関連記事:判例法理による「雇用関係がなくても安全配慮義務を問える」法的根拠の詳細は【一人親方・フリーランスも守られる!雇用関係がなくても会社に安全配慮義務を問える判例法理】をご覧ください。

今回の法改正の概要(令和7年法律第33号)

改正のポイント

  • 個人事業者等の保護対象化:労働者と同一の場所で作業を行う個人事業者等を、労働安全衛生法による保護の対象として明文で位置づけ
  • 注文者等の義務:注文者・元請事業者等が個人事業者等に対して講ずべき措置(設備・作業方法・健康管理等)を法定化
  • 個人事業者自身の義務:個人事業者等が自身および同じ場所で作業する者の安全のために遵守すべき事項を規定
  • 行政的保護の適用:労働基準監督署による指導・監督・是正命令の対象に

施行日は令和8年4月1日(2026年4月1日)。施行通達として厚生労働省労働基準局長から基発0330第1号(令和8年3月30日付け)が発出されています。

対象となる「個人事業者等」とは

職種・形態典型的な状況
建設業の一人親方元請会社の管理する建設現場で、労働者と混在して作業を行っている
運送業の個人事業主ドライバー荷主・元請運送会社の倉庫・積み込みエリアで荷役作業を行っている
製造業の構内下請元請工場の構内で、元請労働者と同じラインで生産作業に従事している
フリーランスのITエンジニア発注者のオフィス・データセンター等に常駐して作業している

注文者・元請事業者が負う義務の具体例

  • 機械・設備・原材料等の危険性の通知:作業に使用する機械・設備・化学物質等の危険性・有害性に関する情報提供
  • 作業場所の安全管理:混在作業における統括安全衛生管理(足場・通路・作業環境の整備)
  • 保護具・安全設備の整備:安全帯取付設備、防護設備、保護具の提供・使用指示
  • 安全衛生教育:新規に作業を行う個人事業者等への安全衛生教育の実施
  • 健康管理への配慮:長時間・深夜・過重な作業条件を課す場合の健康への配慮

改正前と改正後の比較

項目改正前(〜2026年3月)改正後(2026年4月〜)
法的根拠判例法理のみ判例法理+労働安全衛生法の明文規定
行政的保護原則対象外労基署の指導・監督・是正命令の対象
注文者の義務明文規定なし法律上明文で義務化
損害賠償請求の根拠安全配慮義務違反(民事)のみ安全配慮義務違反+労安衛法違反の明確化

法改正が損害賠償請求に与える実務上の影響

今回の改正が民事損害賠償請求の実務に与える最大の意義は、注文者・元請事業者の義務内容が法律上明確になった点にあります。改正前は「判例上の安全配慮義務が個人事業者等にも及ぶか」という点で争われることが多くありましたが、改正後は義務の存在自体を争うことが難しくなり、義務違反の有無・損害との因果関係の立証に集中した主張が可能になります。裁判基準(弁護士基準)の適用により、適正な補償の獲得を目指せるケースがあります。

まとめ

2026年4月1日施行の改正労働安全衛生法により、一人親方・フリーランス等の個人事業者が法律上の保護対象として明確に位置づけられました。従来から判例法理により認められてきた保護が法文上も確立されたことで、注文者・元請事業者への権利主張がより確かな根拠のもとで行えるようになっています。

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