個人事業者・フリーランスが労災に遭ったら、会社に「報告義務」が新設されます―2027年1月施行、基発0624第5号のポイント

2026年6月24日、厚生労働省労働基準局長から基発0624第5号が発出され、個人事業者等(一人親方・フリーランス等)が業務中に負傷・疾病・死亡した場合に、注文者や現場を管理する事業者から労働基準監督署への報告を求める制度の運用が具体的に示されました。2026年4月に施行された「個人事業者等を労働安全衛生法の保護対象とする」改正に続く動きで、2027年1月1日から本格的に施行されます。会社側が事故の発生を把握しながら報告・対応をしないケースへの対抗手段としても注目される内容です。

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今回の通達(基発0624第5号)とは

基発0624第5号は、「労働安全衛生規則及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」の施行について、厚生労働省が都道府県労働局長宛てに発出した通達です。根拠となる改正法(労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律・令和7年法律第33号)は令和7年5月14日に公布され、段階的に施行が進められています。今回の通達は、そのうち個人事業者等の業務上災害に関する報告制度について、実務上の運用を具体化したものです。

📌 関連記事:2026年4月の法改正で個人事業者等が労働安全衛生法の保護対象になった経緯は【2026年4月施行:一人親方・フリーランスが労働安全衛生法の保護対象に】を、改正前からの判例上の根拠は【一人親方・フリーランスも守られる!雇用関係がなくても会社に安全配慮義務を問える判例法理】をご覧ください。

新設される報告制度の全体像

今回の制度で新設されるのは、個人事業者等(一人親方・フリーランス等)が労働者と同一の場所で被災した場合に、以下の立場の者が労働基準監督署長へ報告を行う仕組みです。

報告主体報告が必要となる場合
特定注文者個人事業者に仕事を発注し、かつ同じ場所で自らも仕事を行っている注文者が、当該個人事業者の死亡・休業(4日以上)を把握したとき
災害発生場所管理事業者等特定注文者がいない場合に、作業場所を管理する事業者が把握したとき
個人事業者本人自身が労働者と同一の場所で負傷・疾病により休業したとき、報告主体(注文者等)へ報告
中小規模事業者一定規模以下の事業者について、代表者・役員が被災した場合の労基署への報告

報告は原則として電子情報処理組織(報告支援システム)を用いて行うこととされています。制度の詳細な運用は令和9年1月1日の施行に向けて今後さらに整備される見込みです。

報告を理由とした不利益取扱いの禁止

個人事業者が被災を報告したことを理由に、注文者側が以下のような対応を取ることは、今回の制度上、不適切な取扱いに当たるとされています。

  • 合理的な理由なく契約を解除する、または更新を拒否すること
  • 作業場所への立ち入りを不当に制限すること
  • 過度な監視や嫌がらせなど、就業環境を悪化させる対応をとること
  • 契約解除を示唆するなど、不安を与える言動を行うこと

なお、この不利益取扱い禁止の規定には罰則は設けられていません。もっとも、報告後に不利益な取扱いを受けた場合、それ自体が会社側の不適切な対応の裏付けとなり、別途の損害賠償請求における事情として考慮される余地があります。

個人事業者・フリーランスにとっての実務上の意味

これまで一人親方やフリーランスが現場で被災しても、「労働者ではない」という理由で会社側が事故の把握・対応に消極的なケースが見られました。今回の制度により、注文者や現場管理事業者に労基署への報告という具体的な行動が求められるようになったことで、事故発生の事実が記録として残りやすくなるという変化が生じます。

労働基準監督署に事故の記録が残ることは、後日、会社側の安全配慮義務違反を主張して損害賠償請求を行う際の証拠収集の一助となる可能性があります。裁判基準(弁護士基準)の適用により、適正な補償の獲得を目指せるケースがあります。ただし、本制度はあくまで行政上の報告制度であり、報告の有無そのものが損害賠償請求の成否を左右するものではない点には留意が必要です。

施行は2027年1月1日、今からできる備え

今回の報告制度そのものの施行は令和9年1月1日(2027年1月1日)です。一方で、個人事業者等を労働安全衛生法の保護対象とする本体部分はすでに2026年4月から施行されており、注文者・元請事業者は現時点でも安全配慮に関する義務を負っています。施行を待たず、以下の備えを進めておくことが望ましいといえます。

  • 証拠の保全:現場写真、作業指示のやり取り、負傷時の状況記録は早めに残しておく
  • 契約関係の整理:注文者・元請事業者・現場管理者の関係を整理し、誰が安全配慮義務を負うかを把握する
  • 労災保険(特別加入)の確認:一人親方労災の特別加入の有無を確認し、未加入の場合は今後の対応を検討する
  • 不利益取扱いへの対応:報告や相談を理由に契約解除等を示唆された場合は、記録を残したうえで早期に相談する

まとめ

基発0624第5号により、個人事業者等(一人親方・フリーランス等)が被災した際の報告の仕組みが整備され、2027年1月1日から本格的に運用されます。2026年4月施行の保護対象化とあわせて、会社側に求められる対応が段階的に明確になっている状況です。制度の詳細や、現在進行中の事故対応・損害賠償請求への影響については、個別の状況に応じた確認が必要です。

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