はじめに
骨折の治療は数か月に及ぶことも多く、手術やリハビリを重ねても「骨が完全にはくっつかない」「関節が思うように曲がらない」「脚の長さが左右で違う気がする」といった症状が残ることがあります。こうした症状は後遺障害等級認定の対象になる可能性がありますが、自分の状態がどのパターンに当てはまるのか、どのように主張すればよいのか分かりにくいと感じる方は少なくありません。この記事では、骨折後に生じやすい後遺障害の代表的な4つのパターンと、賠償請求を検討する際に知っておきたい具体的な法的手続きを整理します。
骨折治療後に生じやすい後遺障害のパターン
骨折による後遺障害は、症状の現れ方によって大きく次の4つに分けて考えることができます。まずは全体像を比較表で確認します。
| パターン | 主な特徴 | 認定のポイント |
|---|---|---|
| 偽関節・遷延癒合 | 骨がうまくくっつかない | 画像上の骨癒合不全の有無 |
| 変形障害 | 骨が曲がった状態でくっつく | 変形の角度・部位 |
| 短縮障害 | 健側と長さに差が出る | 健側との長さの差(cm) |
| 機能障害 | 関節の可動域が狭くなる | 健側と比較した可動域の測定値 |
ケース1:骨がうまくくっつかない「偽関節」「遷延癒合」
骨折部が受傷後6か月を経過しても癒合しない状態を偽関節、3か月を経過しても癒合が完了していない状態を遷延癒合と呼ぶのが一般的です。レントゲンやCT画像で骨癒合不全が確認されると、後遺障害の対象として扱われる可能性があります。特に上腕骨・大腿骨・脛骨といった長管骨に偽関節を残した場合は、運動障害を伴うかどうかによって等級の判断が分かれるため、経時的な画像記録を残しておくことが重要です。
ケース2:骨が曲がった状態でくっつく「変形障害」
長管骨が本来の形状とは異なる角度で癒合してしまうケースです。外見上の変形だけでなく、レントゲン写真で計測される変形の角度が一定以上であることが認定のポイントになります。プレートやスクリューによる内固定材が体内に残存している場合も、変形障害の判断材料として考慮されることがあります。
ケース3:脚や腕の長さに差が生じる「短縮障害」
下肢(脚)の短縮は、健康な側の脚との長さの差(センチメートル単位)で判定されるのが一般的で、差が大きいほど等級が上がる傾向にあります。歩行時の左右差や靴の中敷きで補正している事実など、日常生活への具体的な影響を記録しておくと、症状の実態を裏付ける資料になります。
ケース4:関節が動かしにくくなる「機能障害」(可動域制限)
骨折部に近い関節(肩・肘・股関節・膝など)の可動域が、健康な側と比べてどの程度制限されているかを測定し、「関節の用を廃したもの」「著しい運動障害を残すもの」といった基準に沿って等級が判断されます。可動域の測定は角度計を用いた客観的な数値が重視されるため、通院先の医師にきちんと測定・記録してもらうことが欠かせません。
📋 後遺障害の主張に向けて準備しておきたい資料
- 受傷直後から症状固定までのレントゲン・CT画像(経時的な比較ができるもの)
- 可動域を測定した記録(理学療法士・医師による測定値)
- 健側との長さの差を比較した測定記録(短縮障害が疑われる場合)
- 通院・リハビリの経過が分かる診断書・診療録の写し
弁護士への相談で検討できる具体的な対応
骨折後の症状が後遺障害に該当する可能性がある場合、次のような具体的な制度・手続きを組み合わせて検討することができます。
後遺障害の事前認定と被害者請求
後遺障害等級の認定を受ける方法には、加害者側の任意保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者自身が自賠責保険に直接資料を提出する「被害者請求」の2種類があります。被害者請求は手間がかかる一方、提出する医証や画像資料を自ら選んで補強できるため、偽関節や変形障害のように画像所見が重要になるケースでは、被害者請求を選ぶことで審査に必要な資料を過不足なく揃えやすくなる場合があります。
弁護士会照会(弁護士法23条の2)
治療経過や画像データの追加取得が必要な場合、弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会を利用して、医療機関等に対し必要な情報の開示を求める方法があります。個人による資料請求では開示が難しい場合でも、弁護士会を通じた照会であれば対応してもらえるケースがあります。
異議申立て手続
認定された等級が実際の症状に見合っていないと考える場合、自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申立てを行うことができます。初回認定時に提出しきれなかった検査結果や医師の意見書を新たに添付することで、再審査を求める余地があります。
内容証明郵便による請求
示談交渉が進まない場合や、時効の完成が近づいている場合には、内容証明郵便で請求内容を明確にした書面を送付することが考えられます。内容証明郵便による催告を行うと、民法150条により時効の完成が6か月間猶予されます。ただし、この猶予期間内に訴訟提起など別の完成猶予・更新の手続きを取らなければ、猶予期間経過後に時効が完成してしまう可能性がある点には注意が必要です。
交通事故紛争処理センター等のADR・民事調停への移行
保険会社との示談交渉が平行線のまま進まない場合は、訴訟を起こす前に交通事故紛争処理センターなどのADR(裁判外紛争解決手続)を利用する方法もあります。法的な知見を持つ第三者が間に入ることで、偽関節や変形障害の等級評価をめぐる争いについても、話し合いによる解決が図られることがあります。ADRでも解決が難しい場合は、簡易裁判所への民事調停や、地方裁判所への訴訟提起へと段階的に移行することも選択肢になります。
また、後遺障害等級が確定すると、その等級に応じて後遺障害慰謝料や逸失利益(労働能力喪失による将来の減収分)の算定根拠が変わってきます。裁判基準(弁護士基準)の適用により、大幅な増額が見込めるケースがあるため、等級認定の結果を踏まえて賠償額の算定方法を確認しておくことも大切です。
消滅時効など知っておきたい周辺知識
後遺障害に関する損害賠償請求権は、症状固定の診断を受けた時点から進行する消滅時効(民法724条・724条の2)の対象になります。人身損害の場合の時効期間は5年とされていますが、示談交渉が長引くと気づかないうちに期間が迫っていることもあるため、症状固定の診断書を受け取った日付は必ず記録しておくことをおすすめします。
⚠️ 症状固定・時効に関する注意
症状固定のタイミングは、後遺障害等級認定の申請時期だけでなく、消滅時効の起算点にも関わります。担当医から症状固定の診断を受けた日付・内容は、必ず書面やカルテの写しで確認し、手元に保管しておきましょう。
まとめ
- 骨折後の後遺障害は「偽関節・遷延癒合」「変形障害」「短縮障害」「機能障害」の4パターンに大別できます。
- いずれのパターンも、経時的なレントゲン・CT画像や可動域の測定記録など客観的な資料が認定のポイントになります。
- 認定手続きは、加害者側任意保険会社に任せる事前認定と、自ら資料を提出する被害者請求の2つの方法があります。
- 治療経過の追加資料が必要な場合は、弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会という手段があります。
- 認定結果に納得できない場合は、異議申立てにより再審査を求める余地があります。
- 示談交渉が進まない場合は、内容証明郵便の送付により時効の完成猶予を図る方法も考えられます。
- 症状固定の時期は消滅時効(民法724条・724条の2)の起算点にも関わるため、診断日を必ず記録しておくことが重要です。
実際の解決事例として、骨折後に14級が認定された若年者の事例、未成年者の鎖骨骨折で12級が認定された事例、顔面骨折による神経症状について異議申立てを行った事例を掲載しています。事案によって結果は異なりますので、参考情報としてご覧ください。
関連記事もあわせてご参照ください。
交通事故に関するお役立ち情報
骨折後の後遺障害は、等級認定の結果によって賠償の検討内容が異なります。
認定に向けた準備や認定結果への対応について、弁護士にご相談ください。
お電話(0120-130-446)のほか、LINE公式アカウントの友だち登録や無料相談予約フォームからもお申し込みいただけます。
LINE公式アカウントの友だち登録はこちら
無料相談予約フォームはこちら