2026年9月7日

交通事故の過失割合に納得できない場合の対処法|異議申し立てと弁護士に相談するメリット

交通事故の被害に遭い、相手方の保険会社から過失割合の提示を受けたものの、その内容にどうしても納得できない――そうした声は少なくありません。
「自分にはほとんど落ち度がなかったはずなのに、なぜこの割合になるのか」「提示された理由がよく分からない」という疑問を抱えたまま示談を進めてよいのか、不安に感じる方も多いでしょう。
この記事では、過失割合の提示内容に納得できない場合に考えられる原因のパターンと、弁護士に相談することで検討できる具体的な対応方法を解説します。

提示された過失割合に納得できないのはなぜか

保険会社から提示される過失割合は、多くの場合「基本の過失割合」と呼ばれる、事故態様ごとに整理された類型をもとに算出されています。
しかし、この基本の過失割合がそのまま個別の事故に当てはまるとは限らず、提示内容に疑問を感じる背景にはいくつかの典型的なパターンがあります。

ケース1:事故態様の認識が食い違っている場合

相手方保険会社が前提としている事故の状況(速度・進行方向・信号の色など)が、被害者自身の記憶や記録と異なっているケースです。
この場合、警察が作成する実況見分調書に記録された内容と、保険会社の主張との間にずれがないかを確認することが出発点になります。
実況見分調書は当事者の供述や現場の物理的痕跡をもとに作成されるため、事故態様を客観的に裏付ける重要な資料の一つです。

ケース2:修正要素が考慮されていない場合

基本の過失割合には、著しい過失(脇見運転や大幅な速度超過など)や重過失、一時停止義務違反といった「修正要素」が別途加味される仕組みがあります。
提示された割合がこうした修正要素を反映しないまま算出されている場合、修正要素の有無を具体的に主張することで割合が変わる可能性があります。
修正要素の適用は、実務上の裁判例の集積をもとに整理された基準(後述)と照らし合わせて検討されます。

ケース3:ドライブレコーダー等の客観的証拠がある場合

近年はドライブレコーダーの映像が、事故態様を立証する客観的な証拠として重視される場面が増えています。
映像に事故の瞬間や直前の状況が記録されていれば、供述だけでは伝わりにくい速度感や車間距離、信号の状況などを示すことができます。
映像データは上書き保存される機種もあるため、事故後はできるだけ早い段階で保存しておくことが望ましいといえます。

ケース4:示談交渉の初期段階特有の事情がある場合

保険会社が最初に提示する過失割合は、その後の交渉を見据えて、必ずしも最終的な着地点そのものではない場合があります。
交渉の初期段階での提示内容を、被害者側が十分な根拠を示さないまま受け入れてしまうと、修正の機会を逃してしまうことも考えられます。
提示内容の根拠を確認し、必要な資料を揃えたうえで交渉に臨む姿勢が重要になります。

対応を検討する前に確認しておきたいこと

過失割合について弁護士に相談する際は、以下の資料や情報を可能な範囲で整理しておくと、その後の対応がスムーズになります。

  • 実況見分調書の有無(未取得の場合は取得の要否を含めて確認)
  • ドライブレコーダーの映像データ(保存の有無・保存期間)
  • 事故現場や損傷箇所の写真
  • 目撃者がいた場合の連絡先や証言内容
  • 保険会社から提示された過失割合とその根拠に関する説明文書
  • 診断書や修理費用の見積書など損害に関する資料

弁護士への相談で検討できる具体的な対応

過失割合の提示内容に納得できない場合、弁護士への相談では次のような具体的な対応を検討することができます。
「弁護士に相談することをおすすめします」という一般論にとどまらず、実際にどのような制度や手続きが関わってくるのかを理解しておくことが大切です。

弁護士会照会(弁護士法23条の2)による資料収集

弁護士会照会は、弁護士法23条の2に基づき、弁護士が所属する弁護士会を通じて、官公庁や企業などに必要な情報の照会を行う制度です。
実況見分調書の取得や、事故に関連する記録の確認など、被害者個人では入手が難しい資料を収集する手段として活用されることがあります。

判例タイムズ(別冊38)等を踏まえた主張の整理

過失割合の実務では、裁判例を類型化して整理した「別冊判例タイムズ38」などの資料が、基本の過失割合を検討する際の参考資料として広く用いられています。
自身の事故態様に近い類型を確認し、修正要素を含めてどのような主張が可能かを整理することで、保険会社との交渉における説得力を高められる場合があります。

交通事故紛争処理センター等のADR(裁判外紛争解決手続)の利用

交渉で折り合いがつかない場合、訴訟の前段階として、交通事故紛争処理センターなどのADR(裁判外紛争解決手続)を利用する方法があります。
中立的な立場の相談員や審査員が間に入ることで、当事者同士の直接交渉よりも話し合いが進みやすくなるケースがあります。

内容証明郵便による意思表示

交渉の記録を残し、相手方に対して正式に意思表示を行う手段として、内容証明郵便が用いられることがあります。
過失割合や損害額について争いがある旨を明確な形で伝えることで、その後の交渉や法的手続きにおける経緯を明らかにしやすくなります。

調停・訴訟への移行

ADRでも解決が難しい場合、簡易裁判所や地方裁判所での調停、あるいは訴訟に移行して過失割合を争うことも選択肢の一つです。
訴訟基準(裁判基準・弁護士基準ともいわれます)が適用される場面では、示談交渉時とは異なる算定方法により、損害額の見直しが検討されるケースもあります。

過失割合をめぐる争いに関連する法的知識(消滅時効)

過失割合について交渉が長引く場合、あわせて注意しておきたいのが損害賠償請求権の消滅時効です。
民法724条により、被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年(人身損害については民法724条の2により5年に延長)で消滅時効にかかるとされています。
また、事故発生から20年が経過した場合の期間制限についても民法724条2号に定めがあります。
交渉が長期化しそうな場合は、時効の完成を防ぐための時効の完成猶予や更新の手続き(交渉中の請求などにより時効の進行が一時的に止まる、またはリセットされる制度)についても、あわせて弁護士に確認しておくことが望ましいといえます。
なお、そもそもの過失割合の基本的な決まり方については交通事故の過失割合はどうやって決まる?で、示談金の提示額全般に納得できない場合の対応については保険会社から提示された示談金に納得できない場合の対処法でそれぞれ解説していますので、あわせてご参照ください。

まとめ

  • 過失割合の提示に納得できない背景には、事故態様の認識の食い違いや修正要素の未反映など複数のパターンがある
  • 実況見分調書やドライブレコーダー映像など、客観的な証拠の有無を確認することが対応の出発点になる
  • 弁護士会照会(弁護士法23条の2)により、被害者個人では入手しにくい資料の収集を検討できる場合がある
  • 別冊判例タイムズ38等の類型を踏まえた主張整理により、交渉における説得力を高められる場合がある
  • 交渉がまとまらない場合は、交通事故紛争処理センター等のADR、調停、訴訟といった段階的な選択肢がある
  • 民法724条・724条の2に基づく消滅時効にも注意し、交渉の長期化が見込まれる場合は早めに弁護士へ相談することが望ましい

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