被害者が交通事故に遭ってから症状固定に至るまでの間に、2回目の交通事故に遭い、且つ双方の事故で同一部位を損傷した場合、それぞれの加害者に対し、どのような損害賠償が認められるかが問題となり得ます。
どうして問題になるかというと、各加害者が第二事故以降に発生した損害の一部について賠償を認めない可能性があるためです。
すなわち、第一事故の加害者は、第二事故は第一事故とは無関係であると主張し、第二事故の加害者は、第一事故に影響を受けた損害は第二事故とは無関係であると主張するのです。
交通事故に精通していない被害者からすると、誰に、どの範囲で、賠償を求めたらよいのか混乱してしまうと思います。
このようなケースではどのように損害の範囲を決めて示談に臨めばよいのか、法的な考え方の整理と、第二事故に遭った際の注意点についてお伝えします。
各加害者の損害の範囲について
⑴ 第一事故発生から第二事故発生までの間に具体化した損害については、第一事故に起因することが明らかなため、第一事故の加害者へ賠償を求めることになります。
この点はあまり問題にならないかと思います。
⑵ 一方、第二事故以降に具体化した損害については、どの範囲でそれぞれの加害者に責任があるのか、下記の通り考え方が分かれています。
①異時共同不法行為として扱い、第一事故と第二事故の損害について双方の加害者が連帯して責任を負うという考え方と、②双方の加害者がそれぞれの事故が被害者に与えた影響の寄与度に応じて責任を負うという考え方です。
どちらの考え方が採られるかは、後述のとおり事故同士の時間的・場所的な近接性によって傾向が異なります。
①異時共同不法行為として扱い、双方の加害者が連帯して責任を負うという考え方
異時共同不法行為とは、別の時に別の場所で発生した二つの事故が競合し、一つの損害という結果が生じたことをいいます。
民法719条は、複数の者が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負うと定めており、判例上、この「共同」は必ずしも共謀や同一機会を要件とせず、複数の原因が競合して一個の損害を生じさせた場合にも及ぶと解されています。
異時共同不法行為として扱われる効果は、第二事故以降に具体化した損害について、どちらの事故の影響で生じたものかを区別することが困難であるため、その全額を各加害者に対して請求できる点にあります。
例えば、第二事故以降に具体化した損害が100万円の場合、双方の加害者に対してそれぞれ100万円の請求が可能になります(最終的な負担割合は加害者間で調整されます)。
なお、交通事故と医療機関の医療過誤が競合して後遺障害という一個の結果を生じさせた事案について、最高裁は複数の原因が競合して不可分の損害を生じさせた場合に共同不法行為の成立を認め、各加害者に全部の損害についての連帯責任を負わせた判例があります(最高裁平成13年3月13日判決・民集55巻2号328頁)。
この判例は交通事故と医療過誤という異なる種類の原因が競合した事案ですが、「損害を区別できない場合には全部について連帯責任を負う」という考え方を示した点で、二つの交通事故が競合するケースにも参考になります。
②双方の加害者が寄与度に応じて責任を負うという考え方
もっとも、実務上は、二つの事故が完全に同じ結果を生じさせたとまでは言い切れないケースが多く、異時共同不法行為の成立が認められる例は多くありません。
特に、二つの事故の発生時期や場所に一定の間隔があり、それぞれ独立した交通事故として区別できる場合には、共同不法行為の成立が否定され、②の寄与度に応じて責任を按分するという考え方で処理されることがほとんどです。
寄与度とは、各加害者が与えた損害への影響の割合のことをいいます。
例えば、二つの事故の間隔が数か月に及び、それぞれの衝突態様や受傷部位への影響を個別に評価できると判断された裁判例では、共同不法行為の成立を否定したうえで、第二事故以降に具体化した損害について、第一事故加害者と第二事故加害者の負担割合を個別に認定したものがあります(東京地裁平成30年11月28日判決・自保ジャーナル2042号など)。
寄与度の主張立証は、被害者側が行う必要があります。
そのため、被害者が通院した全ての医療機関からカルテ等を取り寄せ、それぞれの事故による衝突・損傷の程度、治療経過、第二事故発生前後の症状の変化などを踏まえて、各加害者の負担割合を検討することになります。
これは医学的知見と法的知見の双方を要する作業であり、被害者本人による対応は非常に困難です。
判断のポイント:事故の時間的・場所的近接性
①・②いずれの考え方が採られるかは、事案ごとの個別判断とならざるを得ませんが、実務上の傾向としては、二つの事故の発生時期・場所が近接し、損害を明確に区別できない場合ほど①の共同不法行為構成が認められやすく、逆に一定の間隔があり、区別が可能な場合ほど②の寄与度按分の構成が採られやすい、という点が一つの目安になります。
いずれの構成が採られるかによって、各加害者への請求方法や交渉の進め方が大きく異なるため、早期に見通しを立てることが重要です。
治療終了前に第二事故が発生した場合、第一事故の示談はしないこと
第二事故の発生後すぐに、第一事故の加害者側の保険会社が示談を求めてくる場合があるため、注意が必要です。
第一事故の加害者は、第二事故以降に具体化した損害については一切考慮せずに示談をしてくるケースがほとんどだからです。
一度示談書を取り交わしてしまうと、その後改めて交渉することはできなくなります。
また、第二事故の加害者側も、第二事故以降に具体化した損害の一部は第一事故の加害者にも責任があると主張し、請求の一部を認めない不適切な対応をとることがあります。
この場合、被害者としては、両者の主張の間で十分な賠償を得られない可能性があります。
よって、第一事故と第二事故の示談交渉は、双方の治療が終わってから同時に進めるべきです。
裁判基準(弁護士基準)を適用したうえで交渉することにより、大幅な増額が見込めるケースもありますので、この点も踏まえて対応することが望ましいといえます。
まとめ
第一事故の発生後、治療が終わる前に第二事故が発生し、同一部位を損傷したケースは、責任の範囲について加害者側との話し合いだけでは決まらず、裁判で決着をつけることが多い事案です。
共同不法行為として連帯責任を追及するのか、寄与度に応じた按分を求めるのかによって、主張立証の方法や必要な証拠が異なります。
また、各加害者の寄与度については被害者側が主張立証する必要があり、非常に難解な手続きとなります。
正当な賠償金の獲得を目指すためにも、第二事故が発生した段階で、複数事故案件の解決実績を持つ弁護士へ相談することをお勧めします。
異時共同不法行為の法的な考え方について、判例の傾向も含めてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご参照ください。
異時共同不法行為とは?複数の交通事故が重なった場合の損害賠償の考え方
弊所で取り扱った複数事故の案件を以下より是非ご覧ください。
異時共同不法行為に該当する2つの事故を依頼者に有利に分断して解決し、賠償金を増加させた事例。
短期間の間に複数の交通事故に遭ったものの、各々の事故を切り離して示談解決した事例
二度目の交通事故に遭われた場合、既存の後遺障害や治療状況との関係整理が必要になるなど、賠償金の算定が複雑になりやすい傾向があります。
賠償金・慰謝料の考え方については、慰謝料・賠償金請求の基礎知識もあわせてご確認ください。
ご自身での対応に不安がある場合は、弁護士に相談するメリットもご参照のうえ、早めのご相談をご検討ください。